美肌とスキンケアと常在菌は密接に関係しています。
皮膚常在菌について知ることは、美肌の本質について理解することになり、それによって間違ったスキンケア、不要なスキンケア製品を避けることができます。
皮膚常在菌とは
ヒトの皮膚には、様々な細菌が生息しています。これらの細菌は「皮膚常在菌」と呼ばれています。
ヒトの皮膚上の1cm x 1cm四方には、1000個~100万個以上の皮膚常在菌が住み着いていると言われています。
皮膚の場所が変われば、皮膚常在菌の種類と量が異なってきます。さらに、ヒトの年齢や健康状態によっても、皮膚常在菌の生育状況に影響を与えると言われています。
皮膚常在菌の種類は今わかっているだけでも1000種類いますが、その中で特に肌に影響を与える4つの菌について説明します。
① 表皮ブドウ球菌(美肌菌)
② アクネ菌
③ 黄色ブドウ球菌
④ マラセチア菌
それぞれの菌について詳細に見ていきましょう。
①表皮ブドウ球菌(美肌菌) 【善玉菌】
最近注目を集めている善玉菌の代表格が表皮ブドウ球菌(美肌菌)です。
美肌菌皮膚から分泌される皮脂の中のトリグリセリドなどを分解して、肌の保湿にはたらくグリセリンを作ってくれる有用な菌です。
同時に脂肪酸も生成するので、肌が弱酸性になり、病原菌などの悪玉菌を退治してくれます。
脂肪酸というのは肌を弱酸性に保ってくれるための酸であり、肌が病気にならないためには必要なバリアを構成してくれるのです。
最近、「弱酸性」という単語を耳にしませんか?「弱酸性石鹸」、「弱酸性ローション」がありますね。
美肌菌は、脂肪酸を生成することで肌を弱酸性に保ってくれるのです。
②アクネ菌 【日和菌(善玉菌にも悪玉菌にもなりうる)】
ご存知の通り、アクネ菌はニキビの元凶ですが、実は皮膚を守る善玉菌としてはたらく場合もあるのです。
アクネ菌が悪さをするのは皮脂が過剰に分泌される時で、日頃の食事やストレスなどが悪玉菌化させてしまいます。
アクネ菌は毛穴の中に生息している皮膚常在菌です。
アクネ菌は酸素を嫌うため、毛穴の中に隠れて生きているのです。
毛穴が詰まり、酸素の無い環境で皮脂が大量に分泌されると、アクネ菌が大量増殖します。
人の免疫システムは大量増殖してしまったアクネ菌を、異物だと認識して攻撃し始めるので、炎症を起こします。
また、アクネ菌菌はポルフェリンという代謝物を生成します。この代謝物にブラックライトの紫外線を当てることでオレンジ色に光ますので、ブラックライトを使ったアクネ菌が生息している毛穴を見ることができます。
③ 黄色ブドウ球菌 【悪玉菌】
黄色ブドウ球菌は肌に害を与える悪玉菌です。
黄色ブドウ球菌は化膿を引き起こし、皮膚の切り傷や引っ掻き傷をそのまま放置すると化膿することがあります。
化膿して黄色くなるのは、皮膚内部から沁み出てきた体液をエサに黄色ブドウ球菌が増殖したからです。
そのまま放置すれば、皮膚内部の組織まで菌の増殖は進み、体に害を与えます。
黄色ブドウ球菌は、表皮ブドウ球菌と違って化膿菌です。
黄色ブドウ球菌は食中毒の原因菌でもあります。
黄色ブドウ球菌が食品の中で増えある一定量を超えると、エントロトキシンという毒素が生成されます。
この毒素は加熱・煮沸処理をしても消えることはありません。
黄色ブドウ球菌が増殖しても食品の色は変化しないため、見た目ではわからないので、気付かぬうちに黄色ブドウ球菌によって食中毒にかかります。
この食中毒で命を落とす危険はほぼありませんが、嘔吐と下痢の症状が出ます。
黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎と深い関係があることが最新の研究でわかりました。
アトピー性皮膚炎の病変部位では黄色ブドウ球菌が大量に検出されます。
この菌が存在する事によりかゆみが増すと言われています。
④ マラセチア菌 【悪玉菌】
マラセチア菌は真菌(=カビ)の一種であり、大人ニキビの原因菌とされています。
ストレスや湿度の変化など外部要因で肌の状態が不安定になると、顔(得に額やアゴ周り)や胸元、背中などにニキビが出てきてしまうことが結構あると思います。ニキビ用のケア用品を利用して、それで肌が荒れて、なかなかニキビが改善しないと悩んでいる方が居ると思いますが、そのような症状は本当はマラセチア菌が影響さいている可能性が高いです。
マラセチア菌は真菌であるため、成長する速度が遅い反面、生命力が強く殺菌してもなかなか死なないという性質があります。
殺菌実験をするとわかるのですが、表皮ブドウ球菌(美肌菌)や黄色ブドウ球菌は、強酸性水を使うと3秒以内に全て死滅するのに対してマラセチア菌は30秒以上経ってもなかなか死滅しませんでした。
マラセチア菌は生命力が強いということは、顔を洗い過ぎると美肌菌が全て無くなり、マラセチア菌だけが残ることを意味します。他の菌がいなくなったことでマラセチア菌の天下になり、マラセチア菌が大量に増殖して、大人ニキビや脂漏性皮膚炎を引き起こすのです。